東京都は5月22日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の解除後、店舗や施設への休業を緩和していくステップや、第2波に向けた対応など、感染症対策と経済社会活動の両立を図るための取組みや手順を示したロードマップを策定し公表した。

小池百合子東京知事は、このロードマップについて、都民が暮らしの中や働く場で、感染拡大を防止に取り組む「新しい日常」への道筋を示したものと説明した。5月22日時点、東京都を含む首都圏などに緊急事態宣言が出されていたが、安倍晋三首相は、早ければ翌週25日にも、緊急事態宣言の全面解除が可能との考えを示していた。東京都のロードマップは、その解除後に、「休業要請の緩和」「再要請」の指標や感染状況を都民に分かりやすく示していくことを目的としている。
ロードマップのポイントは5つ
ロードマップ名は「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ~『新しい日常』が定着した社会の構築に向けて~」。このロードマップは、(1)緊急事態宣言下は外出自粛等の徹底を通じて感染を最大限抑え込む、(2)モニタリング等を通じて、慎重にステップを踏み、都民生活や経済社会活動との両立を図る、(3)必要な場合には、「東京アラート」を発動して都民に警戒を呼びかける、(4)「第2波」に対応するため、万全の医療・検査体制を整備する、(5)「新しい日常」が定着した社会を構築する、の5つを柱とする。
感染状況をみる3指標をベースに対応を判断
休業要請の緩和・再要請を判断する際に用いるモニタリング指標
判断指標 | 指標 | 緩和の目安 | 再要請の目安 |
---|---|---|---|
感染(疫学的)状況 | 1 新規陽性者数 | 1日20人未満 | 1日50人 |
2 新規陽性者における接触歴等不明率 | 50%未満 | 50% | |
3 週単位の陽性者増加比 | 1未満 | 2 | |
医療提供体制 | 4 重症患者数 | ||
5 入院患者数 | |||
モニタリング(監視体制) | 6 PCR検査の陽性率 | ||
7 受診相談窓口における相談件数 |
モニタリングは、「感染(疫学的)状況」、「医療提供体制」、「モニタリング(監視体制)」の観点から、7つの指標について行う。その評価をもとに、東京アラートの発動や必要な休業要請を行うなどして、感染拡大を適切にコントロールしていく。
7指標のうち、感染状況をみる(1)新規陽性者数、(2)新規陽性者における接触歴等不明率、(3)週単位の陽性者、の3指標の数値すべてが「休業要請緩和」の目安を下回った場合、その他の指標も見ながら、緩和を行う。また、3指標のうち、1指標以上の数値が緩和の目安を超え、その他の指標も勘案して警戒すべき状況と判断される場合は、「東京アラート」を発動する。また、3指標の数値が「休業の再要請」の目安を超えた場合は、その他の指標も見ながら再要請を行う。
休業要請の緩和はステップ0~3の4段階で実施

施設等の休業要請の緩和は、ステップ0からステップ4まで4段階で設定する。2週間単位をベースにして、状況を評価して、段階的に施設の休業要請を緩和する。ステップ0は、緊急事態措置下における8割程度の接触機会の低減を目指した外出自粛を要請する段階。ステップ1では、博物館や図書館、観客席部分を除く体育館、プール・水泳場などの屋内運動施設への休業要請を緩和する。また、飲食店等は、夜10時までの営業となる。プロ野球などは無観客試合での実施が可能となる。
ステップ2では、学習塾、劇場、映画館、商業施設など、多くの施設の休業要請を緩和する。ステップ3では、ゲームセンターや遊園地など遊技施設などへの要請を緩和する。
都立学校はステップ1より再開し、分散登校によって段階的に進めていく。また、オンライン学習などの家庭学習と組み合わせ、学習の機会を確保していく。
6月1日に「東京アラート」を発動 夜の街対策を強化
5月25日、緊急事態宣言は全面解除された。解除後は、東京都は、休業要請などの緩和の段階をステップ1とし、6月1日からはステップ2に移行した。しかし、感染状況に悪化の兆候がみられたため、6月2日、「東京アラート」を発動し、都民に注意を促した。発動中は、レインボーブリッジと都庁が赤くライトアップされている。緩和の段階に変更はない。東京都では、若い世代と夜の街に関連する人に陽性者が増えている。
小池知事は6月5日の記者会見で、新規感染者との関連が判明しているこの夜の繁華街対策として、周辺区域での呼びかけを行うとともに、店に感染対策のチェックリストを配布し、しっかり取り組んでいる店には表示を行えるような工夫も行っていきたいと述べた。
事業者向けガイドラインの作成など多面的にサポート
東京都は事業者向けに、施設の利用者や従業員を守るための感染防止対策を示した「東京都感染拡大防止ガイドライン」を取りまとめ公表している。これは各業界団体がそれぞれ作成するガイドラインも参考にして東京都としてまとめたものだ。
また、東京都は、中小企業への制度融資支援や感染拡大防止に資する新事業分野へのビジネス展開の支援、先進的なテレワーク環境整備による働き方改革の促進など、「新しい日常」の定着に向けて多面的なサポートを推進していくとしている。