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WWFが警鐘 「次の動物由来感染症のパンデミックを防ぐための緊急行動を」

海外動向

2020/6/29

報告書の表紙

WWF(世界自然保護基金)は6月17日、次の動物由来感染症のパンデミックを防ぐために必要な提言をまとめた報告書『COVID 19: urgent call to protect people and nature (COVID 19:人と自然を守るための緊急の呼びかけ)』を公表した。

報告書では、必要な対応として、

  1. 感染症を拡散させるおそれのある野生生物の取引と消費を抑制すること
  2. 森林破壊を防ぎ、土地利用の転換を抑制すること
  3. 持続可能な食糧の生産と消費が可能な社会に移行すること

をあげた。これら緊急に必要とされる行動の実施を、国際社会、企業、市民社会組織、個人に呼びかけた。

また、環境や人間、動物の健康を、一つの健康と考える「ワンヘルス」アプローチの視点が重要だとした。「ワンヘルス」は、自然破壊につながる行動を変え、健康・福祉・生活を守る、人と自然の「新しい関係」(a New Deal for Nature and People)を提唱し、同じ環境を共有する人間と動物の健康を、一つのものとする考えだ。

WWFは2020年9月の国連生物多様性サミットに向け、この観点を野生生物の利用や開発にかかわる政策、ビジネスの意思決定に組み込むと共に、緊急の行動をとることを求めた。

感染症の原因は日本とも深く関係

発表にあたり、WWFインターナショナルの事務局長、マルコ・ランベルティーニ氏は、「自然破壊と人間の健康とがつながっていていることを早急に認識しなければ、遠からず次のパンデミックに見舞われることになるだろう」と警鐘し、先にあげた対策により「このリスクは抑えられ、生物多様性の損失や気候変動などにも対処できることになる」と述べた。

また、WWFジャパン自然保護室シニアダイレクターの東梅 貞義氏は、この問題が日本とも深くかかわっている点を指摘する。日本が輸入する木材や紙、パーム油などの原料等が、海外の深刻な森林破壊につながっているケースがある。また日本では、海外の珍しい野生動物を数多く輸入・販売しているが、こうした動物の取引・飼育の管理体制は十分ではなく、これらの動物と共に病原体が持ち込まれてしまうリスクもある。こうした状況を説明し、「野生生物を絶滅から守り、生物多様性を保全する取組みは、これからは私たち自身の社会や、人間の健康を守っていく上からも、より重要な取組みとなるだろう」と述べた。

政府には取締り強化や法整備などを呼びかけ

WWFは、各国政府に対しては、必要な対応を実施するための政策の強化や法整備、資金提供などを求めた。また、次の3つの2030年目標に国際合意することを呼びかけた。

  1. 自然生態系を保護し回復させる目標
  2. 生物種と生物多様性を緊急保護する目標
  3. 生産と消費のフットプリント(環境負荷)を半減する目標

企業と業界に対しては、製品・原料の供給元までさかのぼれるトレーサビリティを確保し、食品サプライチェーンで生じる環境フットプリントの削減につながる、信頼のあるサービスを提供することなどを呼びかけた。

市民社会組織に対しては、危機の影響を直接受けている、脆弱な地域社会へのサポートなど、市民に対しては、より持続可能な選択を行ない、食生活と消費習慣を変えることなどを呼びかけた。

パンデミックリスク、10年以上前から発信

1990年以降、世界では178万平方キロの森が失われ、現在も約10万平方キロの森林が、農地や牧草地などに転換されている。検疫をすり抜け、違法に行なわれる野生動物の密輸も後を絶たない。

このような原因により引き起こされるパンデミックのリスクは、「人類への深刻な脅威」として、10年以上前から世界経済フォーラム(WEF)の指導者や科学者たちにより何度も発せられてきた。感染症の専門家によれば、人の感染症のうち、実に6割が動物由来とされている。また、現時点では確実ではないにせよ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、こうした動物由来感染症の一つと考えられている。

海外動向

2020/6/29